「南京事件の虚構と真実」(下)

 

 

旧植民地帝国主義諸国の如何なる国も「南京大虐殺」などは問題としない (下)

「醒眼正論」(高橋雅雄 平成29年6月号)

 

 

 「首脳会談で習氏は<南京大虐殺>を持ち出し、日本を批判した。だが、トランプ氏は知識がないため話が噛み合わず、習氏は苛立った」(毎日新聞2017年4月27日付)と同6日に行われた米中首脳会談で、米国の北朝鮮への対応策に手詰まり感を感じた習氏は、対米協調を演じようとした中で述べたとある外交筋が明かした。

トランプ氏の外交知識は不十分だが、それだけに常識外れの行動に踏み切る可能性があり、北朝鮮を歴史的地政学的に「庇護」する戦略的立場の習氏も危機感を抱いていたからです。いずれにしても、不確かな「南京大虐殺」を事あるごとに相手構わず対日批判のカードとして切り捲る中国の外交マナー欠如には呆れるしかない。やはり、「嘘から出たまこと」「嘘も百回囁けば本当になる」ことを踏襲している中国ならではの執念からです。

習氏は、2014年3月のベルリン訪問でも講演中に突然、「南京大虐殺」に触れて、「日本軍国主義」の侵略戦争を糾弾し、南京で日本軍が30万人以上を虐殺したと執拗に批判した。

当時、ナチ党員で、シーメンス社(兵器メーカー)の中国駐在30年の武器商人ジョン・ラーベナチス南京支部幹部でもあったが、南京陥落後に日独伊三国同盟に反対していたとして、日本軍からドイツへ追放され、失意の中で書いたのが『ラーベの日記』です。日本軍による「30万人虐殺」を日記に書いたと習氏が明かした。しかし、ラーベ本人が直接見聞したのではなく、伝聞に基づいた記録でした。不確かな「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)」を執拗に一国の首脳が引用して他国を誹謗するのは中国得意の情報戦の「常套手段」です。だから、蒋介石共産党軍との内戦に敗れるまでラーベの恩に報いるため少額年金を送り続けたという。ラーベが公平な歴史の観察者でないのは明らかです。

トランプ氏の米国はもとより、欧州の大国は旧植民地帝国主義国ばかりでしたから、習氏の日本批判はスルーされるだけです。まして、米国も原爆投下はもとより、1945年3月10日一夜の東京大空襲焼夷弾の絨毯爆撃によって市民10万人以上を殺戮したが、これも戦時国際法違反の戦争犯罪です。日本は敗戦国の故か対米抗議をしないし、米国も謝罪しない。仮に、「南京大虐殺」が真実だったとしても、かつての植民地帝国主義国はどの国も対日批判はしないだろう。「虐殺」自体、身に覚えがない国など歴史的に存在しないのです。そもそも「大虐殺」と「虐殺」を犠牲者数で比較するのはナンセンスです。

問題は、ナチスドイツの「ホロコ―スト」はなかったという「説」も「南京大虐殺」は「幻だ」という「説」と同じく無意味です。「ユダヤ人抹殺」と「南京虐殺」自体は否定できない史実だろうが、比較できない。真の「加害者と犠牲者」の検証・特定も難しい以上、数の問題ではないのです。大虐殺の根拠が曖昧のままでは、建設的議論などできない。

日本が、国際情報戦を戦えるだけの体制を持たない中で、ホテルチェーン「アパホテル」を率いる元谷外志雄代表が「南京大虐殺」を否定した自著を世界中のアパホテルの客室に置いていることから中韓が大騒ぎした「事件」があった。しかし、雑誌『新潮45』(2017年5月号)に元谷氏の「中国のアパホテル攻撃に私はいかに対処したか」と題した論文によると、この騒動で逆に客室稼働率が大幅に伸び、ある試算によれば一連の騒動で約1,000億円相当の宣伝効果をもたらしたというから、“災い転じて福となす”の典型です。元谷氏は「歴史というのは、真実の断片を集めて整合性が取れ、あり得る話かあり得ない話か、という観点から理詰めで検証していくべきだ」と毅然と対処したからです。元谷氏は、日本も3,000億円予算、3,000人規模の「情報省」を作るべきだと主張する。

因みに、『新潮45』の論文執筆中、見知らぬ医師から「南京大虐殺」がなかったことを証明する記録映画の存在を知らされた。東宝の戦線後方記録映画『南京』(1938年公開)で、「上海」「南京」「北京」3編の1本だった。「上海」戦後、南京に撮影機材を移動させ、南京陥落翌日に到着して4日間撮影した。このフィルムは全8巻あった。1945年3月の東京大空襲で焼失したが、1995年に北京で8巻中7巻が保管されていたのを中国軍関係者から仲介者を通じて買い取ったものです。解説文によれば、陥落前の南京では、蒋介石による“漢奸狩り”(親日派市民の虐殺)が大規模に行われていた。民間人の大量虐殺を隠蔽するために日本軍の仕業としたのです。映画には、陥落後の南京街は「平和」を維持し路上で爆竹を鳴らして遊ぶ子供たちや市民と日本軍兵士との友好的な交歓風景も撮られている。